2011年4月のことば

◇スリムとは

  人生のスリムとは
  清貧

  生き様のスリムとは
  清潔

行動のスリムとは
簡潔

ビーゲンセンのワンポイント

◇消失感
自然の巨大なエネルギーの前に
人間が積み上げてきた創造物が
ひとたまりもなく 
けちらかされた

なんという無慈悲
なんという残酷
なんという恐ろしさ

いま 自然は取り澄まし
ときは 日々整然と過ぎていく
まるで 何もなかったように

感ずるは ただ無力
感ずるは ただ消失
感ずるは ただ ただ 茫然自失

これほどまでに 人間の力は 小さいのか?

あるできごと 東日本大震災

◇東日本大震災

 今回の大震災では人間の無力を思い知らされた。
 あの日、四谷の会社に家族といた。大変な災害との報道に早めに帰宅することにした。四時半に会社を出て駅に向かったが、全ての電車が止まっており駅は大混雑していた。新宿通りと外堀通りは人で埋め尽くされ、こんなに多くの人達がこの近辺に働いていたんだと、驚きながら眺めた。切れ目のない大群が、モクモクと歩いているのを見て、歩いて帰るしかないと覚悟を決め、人の群れに混じって歩き出した。ひたすら自宅を目指して歩を進めた。休むことなく歩き続け、3時間かけて自宅にたどり着いた。
 そして、テレビに映る悲惨な光景を見て打ちのめされた。堤防が破壊され、家が押しつぶされ、流され、船が、自動車があちこちに散乱していた。自然のエネルギーは、無慈悲・無残・冷酷に、街を総なめしていた。跡形もなく失った街の映像を見ながら、出版業の虚しさを痛切に感じた。出版が何かの役に立つのか、自然の脅威の前には無意味な仕事ではないのか、自問自答しながら涙した。全身が虚脱感に襲われ、生きる力が萎えたのだった。
 何日か経って、本を読んで癒される子どもの新聞報道に接し、救われた。本1冊は小さな物だが、だけれども人の役に立つ、読んだ子供たちが癒される。被災地に本を贈ろう、少しでも義援金を贈ろうと、決めた。帰る家があるだけでも幸せだと思い、知り合いに災いがなかったことに感謝し、もっとできることがないかを考えながら、行動している。二つの団体に本を贈り、日本赤十字に義援金を送金した。
 被災者が希望を持って立ち上がっている。僕も立ち上がらなくてはならない。虚脱感を克服し、生きる力を再生しなければならない。メソメソなんかしておれないのだ。何かを感じてもらえる本を出版する、子ども達に夢を与える本を作る
 立ち上がった被災者の姿に刺激され、ようやく動き出すことができたのである。